あなたに、キスのその先を。
 結局あれから修太郎(しゅうたろう)さんはうちにもよくいらっしゃるようになって……お食事も一緒に摂ることが何度かあって、事実上、家族の一員として認識された感じになっています。

 私も修太郎さんに連れられて絢乃(あやの)さん――修太郎さんのお母様――のお宅で、一緒にお料理を作らせていただいて、そのまま三人で食卓を囲ませていただいたり、と親睦を深めています。

 絢乃さんはあの会合の日、宣言してくださったように、本当の娘のように私を可愛がってくださいます。


 さすがに修太郎さんのお父様――天馬(てんま)さん――とはなかなか気楽に打ち解けることはできなくて……お会いしたのもあのお食事会のあとで考えると、たった一度だけ。それも市役所近くの喫茶店で、三人でお茶をした程度という感じで。

 それだけでも緊張したのですけれど、初めてお会いしたときに感じたほどの威圧感はなくて……。

 何度も本当に年の離れた修太郎(この子)でいいのか?と問いかけていらっしゃる表情は、まぎれもなく息子の幸せを願う父親のそれでした。
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