あなたに、キスのその先を。
「……納得……かどうかはよく分からないのですが……あの、た、例えば……その……イヤではなかった、って言うのじゃ……ダメでしょうか?」

 恐る恐るそうお答えしたら、佳穂(かほ)さんがバンッとテーブルを叩いていらして。

 私は今度こそビクッと飛び上がりました。

「そこよ! それがダメなのよ、日織(ひおり)ちゃん! 分かる!?」

 突然響いた大きな音に、周りから視線が集まってしまって――。

「お、おい、佳穂。お前ちょっと落ち着けって」

 健二(けんじ)さんが慌てて佳穂さんをなだめます。

 修太郎(しゅうたろう)さんが、佳穂さんの剣幕に押されて縮こまる私の肩に腕を回すと、ギュッと抱き寄せてくださいました。

「佳穂、お前いい加減に――」

 修太郎さんが怒りを抑えた声音で佳穂さんを牽制しようとなさったら、健二さんがまるで佳穂さんを庇うようにそれを制していらして、逆に修太郎さんを睨まれました。

「兄さんはちょっと黙っててください。俺も佳穂もまずは日織さんの気持ちを確認したいんです。――兄さんとの話はその後です」

 静かですが、思わず修太郎さんが口をつぐんでしまう程度には、威圧感のある声音でした。
 ふと、お二人のお父様でいらっしゃる天馬(てんま)氏を彷彿(ほうふつ)とさせられて、私は息を呑みました。

「――日織さん、貴女が兄さんのことを好きなのは俺も佳穂も分かってます。二人が相思相愛なのは誰の目にも明らかでしたし、実際貴女たちは婚約なさってました。だから俺たちも、()()()()、二人は結婚するんだろうな、とは思ってましたよ。でもね――」
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