私のおさげをほどかないで!
 そう思ったら、途端にムカッとして、私は鳥飼(とりかい)さんをキッと睨みつけた。
 何でこんなチャラ男相手に私、心かき乱されなきゃいけないの!?

「そういうの、すっごく嫌ですっ! 不愉快です!」

 言って、握られたままの手を、もう片方の手を使って無理矢理ほどいた。

 掴まれたところがジンジン痛んだけれど、そんなの気にならないぐらい私、(はらわた)が煮えくり返っているの。

「あ、おい。待てよ」

 言われても、待ってなんてやるもんか。

 重いごみを持ってきてくれたとき、あんな汚いのを全く意に介した風もなく手伝ってくれるとか……いい人かもしれないって見直しかけたのに。
 危うくほだされてバカを見るところだった。

 私は水道のところに彼を残したまま、大股で店舗入り口を目指す。

 ホント、何なのよ、()()()って! ()()()に似て鈍感だから? 私の身長がその人と同じぐらいだから? だから私といて嬉しい?
 はぁ? 意味分かんない! ふざけんな、バカ!!

 思ってから、何で私、こんなにムカムカしてるんだろうって不思議になった。
< 49 / 632 >

この作品をシェア

pagetop