私のおさげをほどかないで!
***

 バイトを終えて外に出る。
 アパートまでそんなに距離はないので私は基本徒歩でセレストア(バイト先)まで通っている。

 鳥飼(とりかい)さんとの一件以来、なんだかモヤモヤして気持ちが落ち着かなくて。

 何なの、これ。
 本当気分悪い。

 緒方さんや河野(こうの)さんも私のピリピリした雰囲気が伝わってしまったのか、結局あれっきり話の続きも出来ず終いで。

 色々弁解しておきたいこと、あったんだけどなぁ。

 日が落ちるのが遅くなってきて、夕刻でもまだまだ明るめな空を見上げて溜め息をつく。

 18時、過ぎてる……んだよ、ねぇ。
 少し前までは、同じ時刻でも辺りは薄闇に包まれ始めていた覚えがあるのに。
 夏がどんどん近付いてきているのを嫌でも痛感させられる。

 とは言え暑い夏の前に、雨に濡れると結構身体が冷えてしまう、徒歩には辛い梅雨が来るんだけど。
 今年の梅雨は例年と比べてどうだろう。早いかな、遅いかな。雨量はどうだろう。

 そこまで考えて、今まで住んでいた地元と同じ感覚でいていいのかな?とふと思う。
 同じ梅雨でもやっぱり地域差ってあるんじゃないかしら。

 改めて自分は親元を離れて遠方に一人ぼっちなんだと実感して、なんだか急に寂しくなった。

 こちらに来れば、もう少し幼なじみ(のぶちゃん)とあれこれあるかな?って期待したけれど、社会人と学生では忙しさが違うのか、案外顔を見ることも叶わないもので。

 自分から連絡してみる勇気もないのだから当たり前なんだけど。
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