Secret Love
"あの事”
「あーあ、彼女ほしい」

偲月(しづき)は煙草に火をつけながら、ぼやく。

「彼女はいいけど、絶対あの事、言うなよ?」

そう言うのは、偲月とは長い付き合いの裕太(ゆうた)。

「今は平成だよ?
そんな事、気にする?」

「昭和じゃなくても気にする家は気にするからやめろ」

裕太は昔から口うるさい。

偲月は、はいはい、と軽く流す。

あの事、とは、恐らく小学校で誰もが習う、部落問題。

偲月は部落と呼ばれる地域に住んでいた。

今まで部落と呼ばれる地域に住んでいて、特に苦労した事はない。

偲月は普通に高校を卒業して、地元の工場に就職した。
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