ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
 若い頃から医師を目指し異常なほど勉学に励んでいたので、恋愛ごとには疎く、経験もさほどない。

 だから莉々沙先生の態度も、首を傾げたくなるときはあったが、思い過ごしだろうと深く考えてこなかった。

 しかしこれは確実に好意を抱かれていると捉えて間違いないはず。

「そうなのか? てっきり、そういう話をしていたのだとばかり……じゃあ、みちるとはなにを?」

 疑問を投げかけると、綺麗に口紅がひかれた唇がキュッと引き結ばれる。

「悪い、個人間の内容を俺が聞く必要はないか」

 引き下がると莉々沙先生の顔の緊張が緩くなった。

 こんな態度を取るなんて、俺の大切なみちるにいったいなにを言ったんだ。

 苛立ちが沸々と腹の底から湧き上がってくるのを自覚して、そろそろこの無駄なやり取りを終わらせたいと溜め息を漏らす。

「こちらに話が回ってきていないから知らなかったが、莉々沙先生から正式に断っておいてくれないか。みちるとは近々結婚する予定だから」

 口調を強くすると、猫みたいな目が大きく見開かれた。
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