ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
「結婚するんですか?」

「ああ」

「でも、お相手には、お子さんがいらっしゃいますよね」

 だったらなんだというんだ。偏見を持った物言いに心がスーッと冷える。

「俺の息子だ」

 彼女に詳細を語る必要はない。どちらとも取れるように言って莉々沙先生の出方をうかがった。

「……そうですか。それは、おめでとうございます。私も父に薦められただけで、別に本気で見合いをしようとしていたわけではないので」

 口角を引き上げた頬を引きつらせながら言われてもな。まあ、これで二度とみちるに関わらないのならそれでいい。

 莉々沙先生のプライドが高いのは有名な話だ。教授の娘である自分が一介の医師に見向きもされなかったなんて、汚点以外のなにものでもない。

 彼女のなかでなかったことにしてくれるはずだ。

「用件はそれだけか?」

「あ、はい。……失礼します」

 一礼して医局から出て行った背中を見送り、虚空を扇いで目頭を指でグッと押した。

 疲れた。今すぐみちるに会いたい。
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