ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
 それに彼女より、考えなければいけない悩み事ができた。父親との再会についてだ。

 蒼さんと相談した結果、母親も呼び皆で顔を合わせることになり、ふたりの前でいったいどんな顔をして蒼さんと並べばいいのか思いあぐねている。

 父親には母親経由で蒼斗の存在を知らせてある。母親には、三年前に蒼さんと交際していた事実を伝えておらず、蒼斗の父親が誰かも教えていない。

「ただいま」

 蒼斗の支度を先に済ませ、ドレッサーの前で化粧をしていたら蒼さんが帰宅した。ちょうど右目のアイラインを引いていたところなので身動きが取れず、あたふたとしているあいだに蒼斗が部屋を飛び出していった。

「とうしゃん!」

「ただいま蒼斗。カッコいい格好だな」

「うんっ」

 廊下で交わされるふたりの会話になごんでいたら、蒼斗を抱っこして蒼さんが部屋に入ってきたので慌てた。

「待って。化粧が中途半端で恥ずかしい」

「みちるはいつも可愛いよ。スッピンも、化粧をしているときも、ヨダレを垂らして寝ている顔も」

「ヨダレ垂らしてる!?」

 目を剥くと、蒼さんは肩を揺らして笑う。

「間違えた。ヨダレで染みを作っているのは蒼斗だよな」

「うん!」

 蒼斗は意味を理解していないはずだが威勢のいい返事をする。私はといえば、からかわれたとわかり顔に熱が集中した。
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