ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
 診断の結果は風邪だった。

「ただの風邪でよかった」

 少し疲れた表情で微笑んだみちるの姿に胸がずきりと痛む。

 妊娠、出産、そして子供が二歳になるまでひとりで育てあげたのだ。俺の想像を遥かに超える苦労をしてきたに違いない。

 それなのに俺を責め立てるわけでもなく、関係ないといわんばかりにやり過ごそうとしている。

 みちると蒼斗の人生に俺は踏み込ませてもらえないのだろうか。

「付き添ってくれてありがとう。あとは薬をもらって帰るだけだから大丈夫だよ」

「車で来ているのか?」

「ううん。自転車」

 眉根を下げて弱々しく笑うみちるの頭を無性に撫でたくなる。

 以前、免許はあるが車を持っていないと話していた。母親は麻痺が残っているはずなのでもちろん運転はできないし、父親は絶縁状態。これまでずっと不便な生活を送っていたのかもしれない。

「家までどれくらい?」

「自転車で十五分くらいかな」

 だとしたら、道が渋滞していなければ車で五分ほど。

「送っていく」

 椅子に置かれた母子手帳が入ったバッグを持って言うと、みちるは「へっ?」と間抜けな声を出した。
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