冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~
「俺の中では決して終わっていない。きみが、俺の母親のために身を引いたのならなおさらだ。……あの時は、気づいてやれなくてすまなかった」
至さんの瞳は、深い後悔の色を浮かべていた。成優のことだけでなく、なにもかもに気づいているの?
「きみのおかげで、母は趣味の裁縫を楽しめるほどに心が回復した。俺への依存心も、もうない。今は二週にいっぺんのカウンセリングに、楽しみながら通っている」
「本当、ですか……?」
お母様、あの状態からそんなに回復したんだ。よかった……。
きっと、至さんが献身的にケアをしたからに違いない。あの時別れる選択をしたことは、やっぱり間違っていなかったんだ。
「ああ。だから、俺もこれからは自分の人生を生きると決めた。そのためにまずは、失ったかけがえのないものを取り戻さなければ始まらないんだ」
至さんが、愛おしげな目をして私の頬に手を添える。
失ったかけがえのないもの。それがなんなのかを教え導くように、彼は私の顎を軽く引き上げ、顔を近づけてくる。流されていいのか不安がないわけじゃないけれど、抵抗できない。
そのまま自然と目を閉じ、彼に身を任せようとしたその時――。