冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~

「そうだったんですね……ごめんなさい。勝手に誤解して」
「いや、思わせぶりな会話だったのは確かだし、芽衣は妊娠してすぐの、不安定な時だったんだろう? 謝る必要なんてない」
「でも」
「あの時の決別は、お互いに後悔の残るものだったかもしれない。でも、こうして再び巡り合えたこと、俺は運命だと思っている。だから、どうか前向きに考えてほしい。俺と結婚し、家族三人での再スタートを切ること」

 至さんの力強い眼差しが、私のためらいを溶かしていく。彼が、本気で私と成優を守ろうとしてくれているのがわかる。

 今の私たちなら、やり直せるかもしれない。至さんの目をまっすぐ見つめ返し、私は告げる。

「成優に聞いてみます。パパと一緒に暮らせるとしたら、どうしたいか」
「ありがとう、芽衣」
「それと、お母様には必ずご挨拶に伺わせてください。もちろん、お母様の調子のいい日に」
「わかった。話しておく」

 出会ったその日に付き合った過去に比べたら、なにもかもスローペースな私たち。けれどそれは、相手を思いやるがゆえのこと。

 あの頃のように傷つけ合うことなく、ゆっくり、丁寧に愛を紡いでいきたい。

 テラスに降り注ぐ春の日差しを受け、私はそんな穏やかな気持ちだった。

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