冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~
「あっ、も、持ってる! 忘れてた!」
彼は慌てた様子で、脇に挟んでいたクラッチバッグを開ける。バッグの一部が明らかにテニスボールの形に膨らんでいて、こんな時でも持ち歩いていた妻想いの彼に感心する。
「三船さん、蘭さんの腰をボールで押してあげてください。結構強めにゴリゴリしちゃっていいです」
「こ、こうかな?」
蘭さんのそばに屈んだ三船さんが、おそるおそる彼女の腰にボールをあてる。
「あ、もっと下かも。そう、そこ、うん……」
苦痛に歪んでいた蘭さんの顔が、ほんの少し緩む。そうこうしているうちに陣痛タクシーがやってきて、ふたりはせわしなくレストランを後にした。
知人の結婚式に参列した後で赤ちゃんを産むなんて、絶対に忘れられない記念になりそう。
私も至さんも、今日のことを思い出すたびに、蘭さんの赤ちゃんのことや三船さんのオロオロした姿が頭に浮かぶんだろうな。
不思議な縁に思わず笑みをこぼしつつ、すべてのゲストの送賓を終えたので、家族の待つ控室を目指す。その途中、至さんがぽつりと呟いた。