宛先不明ですが、手紙をしたためました。



******



掃除の時間、私と楓は離れてしまう。

席順の都合上、班が違うからだ。

私は教室、楓は西棟2階の階段。

そして、今、私はゴミ箱を2つ両手に持ち、1人でゴミ捨て場を目指していた。

道のりが遠いことにうんざりしながら、歩いていると、途中のベンチに誰かが座っていることに気が付く。



「あれ……」

「ああ、栗山さん」

「か、海藤くん。こんなところで、何してるの?」

「サボり、かな」



みんなが嫌々でも頑張っているのに、サボりはさすがに頂けない。



「健太くんは?」

「何? あいつのこと、気になんの?」

「へ? 別に、そうじゃなくて。いつも一緒なのに、って思っただけ……」

「へぇ?」



海藤くんは、ニヤリと笑う。

いつもの爽やかな笑顔とは違う、初めての表情にドキリとした。

海藤くんは少し間を置くと、そのまま続ける。



「あいつは真面目に、トイレ掃除してると思うよ」

「そう……」



別に特に話題もなく、黙り込んでしまう。



「ゴミ捨て、途中なんじゃないの?」



指差されたゴミ箱を一瞥したとき、自分のブレザーのポケットを見た。

忘れていた訳じゃないけど。

ポケットには、あの子のラブレターが入っている。

──今、渡しても、大丈夫かな。

こういうのを渡す時は、相手の機嫌も重要だと思う。

今なら、そこまで悪くないと思う。

意を決して、ポケットからそれを取り出した。


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