宛先不明ですが、手紙をしたためました。
2通目_.・*…〆

読み取れない気持ち




「あれ? おはよう」



湿気のせいで、少し空気が重く感じる、曇天の朝。

家の玄関を出た私の目の前を、幼馴染みが横切る。

この頃、ほとんど会話の無かったお馴染みも、私の声に足を止めると振り返り、ちゃんと応えてくれた。



「おはよう」

「健太くん、珍しいね。こんな時間に。朝練は?」

「テスト期間は無い」

「なるほど。だからか」



どちらともなく歩き出し、自然と並んで歩く。

中学生の時よりも、背が伸びた健太くんを見上げた。

幼稚園、小学生の頃は、髪を引っ張られたりして、もっと悪戯っ子だと思っていたのに。

今ではあまり感情を出さず、落ち着いた雰囲気の男の子になってしまった。

どんな心境の変化があったか、知らないけれど、あまりにも変わった。

そして、中学2年生のあたりから、現在、高校生になった今も、ほとんど喋らなくなっていた。

悪戯っ子に戻られても困るけれど、せめて以前のように話せたら──。

今の状況は、好機だ。

そう思い、私から話し掛ける。



「あの……学校まで、一緒に行っても良い?」

「良いけど」



想像以上に、素っ気なく返される。

とりあえず、拒否されなかったということに安堵した。



「こうやって話すの、久しぶりだね」

「確かに」

「身長、かなり伸びたね。今、何センチあるの?」

「……187」

「ええ! すごいね……」



どうしたことでしょう。

会話が続かない。

この会話の内容だと、まるでご近所のおばさんと学生さんの、それだ。

何とか、私の年齢を近所のおばさんから、同級生レベルまで持っていきたい。

そうなると、何か学生同士、共通の話題でなければ。


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