宛先不明ですが、手紙をしたためました。

困惑の言葉選び




******



体育の授業が終わり、体育館から教室へ戻ろうと、楓と2人で渡り廊下を歩いていた。

先程までの授業のバスケでかいた汗が、控えめな風に吹かれて、少し冷える。

私が母親譲りの運動音痴な為に、ドリブルの仕方が不細工だとか、何も無いところで転んだだとか、楓には、そんな話で面白がられていた。



「華世は本当に見てて、飽きないねぇ」



楓が楽しそうに笑う。

私は、それに膨れて返すと、不意に楓が大きく欠伸をした。



「眠いの?」

「んん……、昨日、バイト結構、夜遅くまで入ってたから。今、疲れがきちゃったかも」

「大変だねぇ」



伸びをして答える楓を労る。

すると、突然、前方に数人が現れ、道を塞がれた。

体操服の私たちの前に、制服姿の4人組の女子。

あまり見覚えが無い子たちだ。

真ん中に立つ背が低くて、如何にも大人しそうな女の子が、手に四角くて、白い物を持っている。

このシチュエーションには、慣れてしまっているので、この後に何を言われるのか、大体の察しがつく。

案の定、大人しそうな女の子の隣に居る、見た目だけでも、気が強そうな対照的な子が、私を見た。



「あなた、1年D組の栗山さんだよね?」

「はい。そうですけど」

「この子、あなたと同じクラスの海藤くんのことが好きなの。でも、恥ずかしいって言って、いつまでも渡せなくて」

「は、はぁ」



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