宛先不明ですが、手紙をしたためました。



「そしたら、あなたがよくラブレター渡しの代行してるって、聞いたことがあったから。ねぇ、頼めないかな」



ラブレターを握り締めている女の子に、目をやる。

これで、もし私が渡したら、この気の強そうな子から、更に私を経由してしまうことになる。

この子の気持ちは、かなり遠回りで彼に伝わってしまう。

この子は、それで本当に良いのだろうか。

断ること前提で、返す言葉を探す。

私がもたついていると、先に楓が前に出そうになっていた。



「いい加減にして。華世はもう──」

「楓。ちょっと待って」



私が声を発して止めたとき、楓は目を見開いて驚く。



「私から言わせて」

「珍しい。華世が、そんなハッキリ言うなんて」

「楓が教えてくれたんでしょ? 『簡単じゃないから、大事なことなんだ』って」



人に、はっきり言うのは苦手だ。

そう言える人には心底、憧れてきたけど、怖じ気付いてしまうのだから、仕方が無い。

緊張で構えている私の心臓は、忙しなく脈を打っている。



「ごめんなさい。もう、こういうことは止める、って決めてて」

「……渡してくれないって、こと?」



気の強そうな子が、眉をひそめる。

思わず、足がすくんだが、怯んでも居られない。

鼻から、空気を吸い込んだ。



「……うん」



< 21 / 120 >

この作品をシェア

pagetop