記憶喪失の妻は一途な夫(外科医)に溺愛される
「うれしすぎ・・・うれしすぎだよ、桐乃。」
その声が少し震えていて、私は恥ずかしさなど一瞬で忘れてしまう。

初めて見る彼の表情に、大きく揺れているのは、私の奥に眠る私ではない。
明らかに今感じている感情だ。

少し体を離して、私は彼の背中に手をまわして抱き着く。

「愛してる、桐乃。」
いつも贈られる彼からの愛の言葉。


私は沸きあがる感情に逆らわず、心から出た言葉を口にした。

「私も、愛してる。」と。

彼は慎重に、それでも強く、私を抱きしめたまま何度も何度も愛していると繰り返した。
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