記憶喪失の妻は一途な夫(外科医)に溺愛される
「もしも思いだせなくてもいい。生きていてくれればもう一度、嫌、何度だってやり直せる。」
「・・・」
「俺はあきらめない。桐乃が俺を忘れても、何度だって思いだしてくれるように努力する。もしも俺を思い出せなくても、もう一度。」
「・・・もう一度・・・?」
紫苑はその整った顔にくしゃっとしわを寄せて笑う。無邪気に。

「何度だってやり直すよ?桐乃と出会って、断られても何度でもデートに誘って、他愛もないようなことで笑いあって、お互いのことをたくさん話して・・・。俺は何度であっても君に恋をする。そして、君に振り向いてもらえるように全力で努力する。それだけだ。」
彼の言葉に、私の心が震える。

でもこれは緊張でも動揺でもないとわかる。

これはうれしくて、心が震えているんだ。

この嘘のない無邪気な顔に、私の心が、愛しくて震えているんだ・・・と。
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