記憶喪失の妻は一途な夫(外科医)に溺愛される
『食欲、ないかしら?』
「・・・」
看護師が私の方を見て何か語り掛けてくれている。
点滴の早さを調節していた彼女が私を気遣ってくれている目をしていることはわかるけれど、何を言ってくれているのかわからない。
『fine?』
そのくらいの英単語はわかる。
「・・・」
大丈夫とは決して言えない状況に、私がぎこちなく微笑むと、看護師は私の肩に手を置いて何かを言ってから微笑み、病室を出て行った。

何を言ってたんだろ・・・。
考えながらぼーっと目の前のトレイをみる。

大きなパンにスクランブルエッグ、ゼリー。野菜のサラダ。
量がかなり多い。

心なしか胸がむかむかする。
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