記憶喪失の妻は一途な夫(外科医)に溺愛される
『バンッ!』
「桐乃っ!?」
突然病室の扉が開いて、私が朝から探していたその人が慌てた様子で姿を見せた。

「大丈夫か?ごめん、そばにいなくて。心細かったろ。」
私の元へ駆け寄る紫苑は、昨日とは違い、ドラマの世界でよく見るような手術着に白衣を着ていた。

「緊急のオペが入って、そばにいられなかったんだ。ごめんな。心細かったよな。」
私の頭に手をあてて、私の顔を覗き込む紫苑。

彼が話す日本語に、少しだけほっとする。

頭を撫でられる私が少し困っていると、紫苑ははっと気づいて手をひっこめる。
「ごめん。つい。癖で。」
でも、彼に触れられるのは嫌じゃない。正直。
「大丈夫・・・」
小さな声で答えると、紫苑はふっと笑って私のベッドに座った。
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