記憶喪失の妻は一途な夫(外科医)に溺愛される
「自分の中にもう一つの感情が確かに存在していて。」
「うん」
私の言葉をひとつひとつ真剣に聞いて受け止めてくれている彼。

「その私が・・・」
「うん」
「・・・泣いてる」
震える声で彼に言うと、彼は苦しそうに顔をゆがめてから私の体を抱きしめた。


彼の、こんなにも衝動を抑えられない、余裕のない表情を始めて見た。
もしかしたら記憶を失っているころの私が知っているかもしれないけれど。

今の私は初めて見た。

いつだって平静を装おうとしてくれていることを私は気付いている。

それが私の為だということにも気づいている。
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