記憶喪失の妻は一途な夫(外科医)に溺愛される
「今日は私がやるから。」
と彼の背中を押すと、彼がくるっと体の向きを変えた。

「きゃっ」
「おっと」
バランスを崩した私を、すぐに抱き留めた紫苑はそのまま、遠慮がちに私の体を抱きしめる。

「おはよう」
「おはよう・・」
「なんか・・・」
「ん?」
抱きしめたまま話を続ける彼。

「なんか・・・思い出した・・・。」
「・・・」
「目を覚ますと、桐乃がこうしてキッチンに立ってて、寝ぐせ頭の俺が後ろから抱きしめる。・・・あたりまえと思ってた日の事。」
感慨深そうに話す彼に申し訳なくなる。
< 89 / 219 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop