一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
「見る必要がない」

 見られたくないのか、車のスピードがさっきより出ている。

「実物でいいだろ?」
「実物はいるけど、それはそれというか……」
「俺がここにいるのに欲張りだな」
麻王(あさお)悠世(ゆうせい)がリセにどんな服を作ったのか見たかったの」

 私の子供みたいな嫉妬に気づいたのか、リセが笑う。

「俺は琉永の作る服が好きだよ」

 その言葉は私にとって、最高の殺し文句だった。
 そんなふうに言われたら、なにも言えなくなってしまう。
 にやけた顔をリセに見られたくなくて、窓のほうに顔を向けた。

 ――どうしよう。すごく嬉しい。リセが私の服を好きだって!

「けど、まだまだだな」
「えっ!?」

 ――持ちあげておいて、それから地面に叩き落とすスタイル!?

「着いたぞ」

 車は『Fill(フィル)』のデザイン事務所の駐車場に入った。
 そして、エンジンを切り、リセが車から降りる。

「どうしてリセも一緒についてくるの?」
「ああ。ほら。妻の職場に挨拶しないとね」
「その格好で!? なんのために!?」
「んー、職場見学?」

 リセが悪い顔をして笑ったのを私は見逃さなかった。

 ――なにをたくらんでるの?
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