一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
「清中家の後妻に入って、子供二人の面倒を見るのは大変でしたのよ。琉永さんの結婚が決まってくれたら、一安心ですわ」
「そうですか」

 啓雅さんは継母の昔語りに付き合う気はないらしく、愛想笑いさえ浮かべず、素っ気ない返事をする。
 継母と話すためにここへきたわけではないのはわかる。

「下の子も病弱で手がかかるんですのよ」

 啓雅さんの冷めた態度と重い空気をなんとかしようと、父は思ったらしく、口を挟もうとするけれど、継母の独壇場。

「お金もかかるし、本当に子育てって大変。啓雅さんは賢くて、手がかからない子だったと、乾井社長から聞いておりますわ」
「まあ、お手伝いがいたので不便はなかったですね」
「お手伝い! さすが乾井グループの御曹司。それに比べて、清中は貧乏で……」

 ここからずっと、継母の苦労話が続いた――嘘だらけの。
 継母は私の母が亡くなると同時に、父と結婚した。
 結婚したスピードを考えたら、母が亡くなる前から関係があったとわかる。
 父に聞かなくても、親戚たちが集まった場では、否応なしに話し声が耳に入ってくる。
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