一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
第24話 満ちていく月
 理世(りせ)が譲ってもらったという家は、ところどころに昔の名残がが残っていた。
 理世と悠世(ゆうせい)さんの幼い頃の写真はもちろんのこと、代々の麻王の人々の写真や誰かが趣味で描いた絵など。

 ――ここは、麻王の家の誰かが使っていたアトリエだったのかも。

 たまたま高級住宅地になっただけで、昔は違っていたはずだ。 
 そんなことを思いながら、一人、アトリエに私はいた。
 夕食後、理世は何件か、仕事の連絡をしているのが聞こえてきた。
 本当は仕事だったのに、私の引っ越しのせいで予定が狂ったせいだ。
 
「邪魔にならないよう気をつけなきゃ……」

 理世はきにするなって言っても、私は気にする。
 それに、『Fill(フィル)』のこともある。 
 今日のお昼過ぎに、コーヒーを淹れて持っていくと、理世は私たちが描いたデザイン画を真剣に眺めていた。

 ――理世は本気で『Fill(フィル)』を『Lorelei(ローレライ)』と並ぶブランドにしようとしている。

 その真剣な顔を見て、そっと書斎のドアを閉め、私は静かにデザイン画を描く。
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