一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
 春に咲く真っ白な花びらをイメージしたコートが、ローレライによく似合っている。

「ショー前で忙しいのに、すみません」
「『Lorelei(ローレライ)』の服と『Fill(フィル)』の服を交互に出す演出だからな。そっちにトラブルがあると困る」

 相談しろという意味なのだろうかと思って、わけを話した。

「私のモデルだけ、到着していないんです。連絡もつかなくて」
「ああ、なるほどね。それなら、他のモデルに代役を頼めばいい」
「それなら、私が着るわ」

 ローレライが口をきいて、その場にいた全員が驚いた。
 それは、そばにいた悠世さんも同じだった。

「いや、それは……」

 いつもは余裕たっぷりな悠世さんなのに、うろたえた顔を見たのは初めてだった。
Lorelei(ローレライ)』だけを着るローレライは、悠世さんだけのもの。

「絶対に駄目だ」

 ローレライに厳しい口調で、悠世さんが言い放つ。
 その険しい表情に、私は思った。

 ――悠世さんはローレライのためだけに、『Lorelei(ローレライ)』の服を作っているんじゃないだろうか。
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