一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
「俺のローレライは、歌わないローレライですよ。人を惑わし、命を奪っては困る」

 悠世のセンスは、誰もが認めるところである。
 だが、一度決めたら引かない意思の強さも親族全員が知っている。
 そして、どんな場所であっても。必ず――

「ローレライ。君はこのままでいいのかね? 悠世だけでなく、大勢の人と関わり、もっと有名になりたいとは思わないのか?」

 ローレライを連れている。
 さすがにファッションビルに連れて入るのは、危険だと思ったらしく、車で待たせていたが、昼食会は別だ。
 ローレライは父の言葉が聞こえたはずなのだが、隣の悠世をちらりと横目で見る。

「父さん。ローレライは俺のものですよ。麻王グループの持ち物ではありません」

 父は苦笑した。
 見るからに若いローレライを誘拐してきたのでは、と父は心配し、興信所まで使って調べたのだが、ローレライは未成年ではなかった。
 外見からは、美少女にしか見えないが、悠世と出会った時の彼女は二十歳。
 時を止めたように、彼女は成長していなかったのである。
 これでも、大人の体つきになったほうだ。
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