政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 昨日までなら怖くて怯えていたと思うのだが、今はもう怖くない。

 あんなにハッキリと浅緋が片倉やそれから園村の父にも大事にされていた、と言ってくれた人なのだ。

 それだけ父のことも、片倉のこともよく知っている人なのだと分かったから。
 それに、前の時も今回も助けてくれた。

 槙野は言葉や、やることは少し突飛だけれど、いつも浅緋を見守ってくれているような気がする。
 この人には本当のことを言っても大丈夫。

 浅緋は少し俯いて、笑った。
「私、慎也さんに嫌われてしまったかも知れません」
「はあ?」

 槙野にしてみれば、嫉妬でおかしくなりそうだという片倉の声を聞いている。

 それに浅緋を迎えに来た時の片倉の形相は見たことがないようなものだったのだ。
 あんなのがすぐに冷めてしまうようなものだとは、槙野にはとても思えなかった。

「なんだ、話さなかったのか?」
「いえ……あの、お話はしたんですけど」

 浅緋自身はぎゅうっと抱きしめられて、片倉の顔を見ることもできなかったし、片倉は『怒っているわけじゃない』と言っていた。

「怒っているわけじゃない……っておっしゃったんですけど……」
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