政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 怯えてしまうのではないか、そう思うだけで浅緋に対してはひどく臆病にもなってしまう。

 見られたくない、なんて、今まで経験したことのない感情だ。

 見られたくないから、ついきゅうっと抱きしめてしまったら、腕の中にすっぽりと収まる浅緋の華奢な体や、女性らしい柔らかさが途端に意識された。

 ずっとでも抱いていたい、と思う自分はおかしいのだろうか。

 こんなやり方はきっと良くない。

 まるで、園村の遺言を盾のようにして、浅緋を断れないような状況に追い込むことはいいことじゃない。

 なのに、浅緋はごめんなさい、と謝るから。
 違う。嫉妬でこんな風に抵抗できなくしておいて、悪いのは自分なのだ。

 だったら手放せばいいと思うのに、それこそは絶対にできない。
 愛おしくて愛おしくて仕方のない存在なのだ。

 単なる嫉妬なのに、それに対して『ごめんなさい』と謝る浅緋に謝るのは理由があるのかと思ったら、『慎也さんがそんな風に怒ることはないから……』と言う。

 怒らせたのは理由があるからなんだろう、というのが浅緋の考えなのだと思う。

 だが怒っているわけではないのだ。
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