僕惚れ③『家族が増えました』
マンションの敷地内……それも周りからは死角になったピロティ内に入っていたので油断してしまったけれど、そこに先人がいたならば話は別なわけで。
葵咲は、ハッとして気配のしたほうを見遣る。
(わわっ、人、いたのっ!)
理人との嬉し恥ずかしなあれやこれやを思い出して一人百面相になっていたところを、見知らぬ男性――二十代後半くらいかな?――に見られてしまった。
その男は、少し離れたところに駐車された車内――運転席――から、葵咲を見ていた。
車が軽トラで、そこに――黒のハイラックスサーフと入れ替わり立ち替わりで――駐車されているのをよく見かける車だったのと、何よりエンジンが切られていたことで、葵咲は車内に人がいると気付くのが遅れてしまったのだ。
助手席に置いてある箱の中の何かに触れていたらしい彼は、中身と葵咲を交互に見比べると、何かを決めたようにドアを開ける。
車内にいたときには分からなかったけれど、立ち上がったその男は、割と長身で。
ホスト然とした容姿の、シャープな印象のかなり整った顔。けれど作業服を着ているのと、軽トラから降りてきたところをみると、その官能的な容姿に似合わず、現場仕事の人みたいだ。
遠目にも、その人が凄くハンサムだというのは分かったけれど、葵咲はやはり、同じ美形なら優しそうな理人の顔のほうが断然好みだな、とぼんやり考える。
そんな、取り留めのないことを思って突っ立っていたら、至極冷たい視線で射竦められた。それが何だか怖くて、葵咲はたじろぐ。
よく考えてみたら、ピロティはマンションの建物下で、道からは死角になっている。
そこに見知らぬ男と二人きりとか……結構怖いシチュエーションかもしれない。
いつもは理人と一緒だったから、あまり感じなかったし、そもそも人と出会うことも滅多になかったから、葵咲はここで見知らぬ異性に出会うかも知れないという怖さを失念していた。
葵咲は、ハッとして気配のしたほうを見遣る。
(わわっ、人、いたのっ!)
理人との嬉し恥ずかしなあれやこれやを思い出して一人百面相になっていたところを、見知らぬ男性――二十代後半くらいかな?――に見られてしまった。
その男は、少し離れたところに駐車された車内――運転席――から、葵咲を見ていた。
車が軽トラで、そこに――黒のハイラックスサーフと入れ替わり立ち替わりで――駐車されているのをよく見かける車だったのと、何よりエンジンが切られていたことで、葵咲は車内に人がいると気付くのが遅れてしまったのだ。
助手席に置いてある箱の中の何かに触れていたらしい彼は、中身と葵咲を交互に見比べると、何かを決めたようにドアを開ける。
車内にいたときには分からなかったけれど、立ち上がったその男は、割と長身で。
ホスト然とした容姿の、シャープな印象のかなり整った顔。けれど作業服を着ているのと、軽トラから降りてきたところをみると、その官能的な容姿に似合わず、現場仕事の人みたいだ。
遠目にも、その人が凄くハンサムだというのは分かったけれど、葵咲はやはり、同じ美形なら優しそうな理人の顔のほうが断然好みだな、とぼんやり考える。
そんな、取り留めのないことを思って突っ立っていたら、至極冷たい視線で射竦められた。それが何だか怖くて、葵咲はたじろぐ。
よく考えてみたら、ピロティはマンションの建物下で、道からは死角になっている。
そこに見知らぬ男と二人きりとか……結構怖いシチュエーションかもしれない。
いつもは理人と一緒だったから、あまり感じなかったし、そもそも人と出会うことも滅多になかったから、葵咲はここで見知らぬ異性に出会うかも知れないという怖さを失念していた。