僕惚れ③『家族が増えました』
「ちょっ、葵咲、何これ……」

 無表情で箱の中を見つめる理人に小さくそう言われた瞬間、葵咲はてっきり怒られているんだと思った。

「ご、ごめ……」

 それで謝ろうとしたら、箱を覗き込んでいる理人から「めちゃくちゃ可愛いんだけど!」という声が聞こえてきて。

 言いながら、理人がデレッとした顔で箱の中身を抱き上げる。

「僕、猫すごく好きなんだよね」

 母親がアレルギーで飼ってもらえなかったんだけど、と言いながら真っ黒な子猫の小さな足の裏を鼻に当てて、肉球のにおいを()ぐ。

「このにおいがね、好きなんだ。こう、なんて言うかキナ臭い感じがたまらないっ!」

 葵咲は理人のデレデレした反応にうまく順応出来なくて、押し黙ったまま、危うく思考停止に(おちい)りかけた。

「あ、あの……理人?」

 恐る恐る呼び掛けたら「ん?」とすごく嬉しそうな笑顔でこちらを向かれて。

「あ、あのね……理人、その子、うちの子にしても……」

 言い終わらないうちに「え!? この子、飼い主いないのっ!? 葵咲がいいなら僕は大歓迎なんだけど!」と即答された。
< 27 / 89 >

この作品をシェア

pagetop