僕惚れ③『家族が増えました』
***

「男の子かぁ~」

 子猫のお尻のあたりを確認してそう(つぶや)いた理人(りひと)に、葵咲(きさき)は瞳を見開く。

「理人、性別わかるの?」

 聞けば、「絶対とは言い切れないけれど、多分オスだと思うよ?」と言われた。

 どうやら肛門と尿道口の距離が決め手らしい。

「この子は離れてるから多分男の子」

 葵咲は理人がそんなに猫に詳しいなんて知らなくて、驚かされるばかりだ。

「え? 言ってなかったっけ? この、美人さんで目が大っきくて、ちょっと吊り気味な感じがさ、アーモンドアイのキミみたいでたまらなく好きなんだよ、昔から」

 結局はそこか!という発言に、葵咲は思わず吹き出してしまった。

「ねぇ理人、私、猫なの?」

 聞けば、「犬じゃないのは確かだろ?」と返ってきて妙に納得させられてしまった。

「それでね、その子の名前なんだけど…“セレ”とかどうかなぁ?って……」

 恐る恐る言うと、「何でセレ?」と聞かれて。

 あー、やっぱり由来、聞きますよね?と思って、葵咲はどうしよう?と固まってしまう。

 と、そこで来客を知らせるチャイムが鳴って、葵咲はこれ幸いとインターホンに駆け寄った。
< 28 / 89 >

この作品をシェア

pagetop