僕惚れ③『家族が増えました』
「葵咲、服脱いで?」

 有無を言わせぬ調子で理人がじっと見つめてくるのを、葵咲はヘビに睨まれたカエルになったような気持ちで見返した。

 リビングの箱の中に子猫(セレ)がいると思うと、ここで服を脱いでしまうのはどうしても躊躇(ためら)われて――。

 それに子猫のためのグッズだってまだ(そろ)えていない。

 今、ここで理人の言う通りにしてしまえば、きっとそう言うことに発展してしまうのは容易に想像がついたし、そうなればホームセンターの営業時間に間に合わなくなってしまう。

 理人からふと視線をそらして壁にかかった掛け時計を見ると、時刻は19時半を過ぎたところだった。

 葵咲が送信した意味深なメールのおかげで、いつもより理人の帰宅が気持ち早かったとはいえ、近場のホームセンターは確か二十一時には閉店してしまう。

「あ、あのっ」
 理人をじっと見つめながら、葵咲は一生懸命考える。

(どうすれば、現状を打開できるかな?)
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