魔法の恋の行方・ドラゴンのヘタレ純愛・シリーズ6(グラゴールとエリィ)
<グラゴールの館・翌朝・その5>

その声の方に
エリィは顔を向けた。

ドワーフ族の女の人・・・
黒髪の小柄な中年の女が、
心配そうにのぞき込んでいる。

丸い顔を丸い鼻と、
丸い目が愛興を見せる。

「ここは・・?」
「道端で倒れられていたのですよ?
それを旦那様が見つけられて、
お連れしました」

あの時・・
お婆さんと話していて、

急に強烈な光で、
頭の中が真っ白になった・・・
それからは・・・

「ここはどこなのですか・」
エリィは重い手を額に乗せて、
思い出そうとしていた。

「グラゴール様のお館ですよ。」
アンナは水差しから、水をグラスに注いだ。

「お嬢様のお世話をいたします、
アンナと申します。
なんでも心配な事や困った事が
あれば、おっしゃってくださいね」

あれは夢なのかな。
エリィは
ぼんやりと思い出していた。

・・・愛しているって
・・誰か・・

「お水を飲んでくださいね。
それから・・・」
アンナが言いかけると

「あの、アンナさん、
私帰らなくっちゃ・・」
エリィは起き上がろうとしたが、
また、横向きに倒れてしまった。
体に痺れ感が残っている。

「神殿にも、使いを出しました
から、安心してくださいね」

「私・・どうしちゃたのかしら・・こんな事初めてで」

エリィは不安げだったが、
アンナが肩を抱いてくれて、
水の入ったグラスを、唇につけてくれた。

「もう少し、お休みになれば
大丈夫ですよ。
若い女の人は、よくあることです」
アンナは安心させるように、
微笑んだ。

「さぁさ、お寝間着に着替えましょうね。
その服で寝るのは、窮屈でしょう。お手伝いしますから」

「はい、ありがとうございます」
アンナは手慣れた様子で、
服を脱がせ、寝間着に着替えさせた。

それから横にさせると、
エリィはすぐに目を閉じた。

眠り薬の効き目は早い。

< 28 / 60 >

この作品をシェア

pagetop