初恋グラフィティ
「あっ…、食べます…、ケーキ…!ぜひいただかせてください…!」
私があわててそう言うと、恭平さんのお母さんは再び笑顔を見せた。
「あらあら…。じゃあ赤ちゃんの分までいっぱい食べていってね」
その笑顔は恭平さんのとよく似ていたけど、
お母さんの方は何とも言えないやさしい目をしていて、
彼女の未来を知ってる私としては、ひどく心が苦しかった。
…この人はお腹の赤ちゃんのおばあちゃんにあたる人なんだよね。
そうすると、私にとっても他人じゃないということで…。
いろんな思いが込み上げてきて、急に涙が出そうになった。
私はそれをこらえるのに必死で、
「すみません…、ちょっとうちに電話してきます…」
そう言って席を立った。
廊下に出た私は、目にハンカチを当てながら家に電話をした。
母に「夕飯はいらないから」と告げてまた部屋に戻ると、
テーブルに着いた恭平さんがグラスにジュースを注いでくれていた。
「おー、志保ちゃん戻って来たな…。よし、じゃあ乾杯しようか」
そう言ってウーロン茶を手にした恭平さんは、やっぱり嬉しそうに見えた。