初恋グラフィティ

「どうした…?急に…」




ユキちゃんが私の目を見ながら聞いてきたので、こっちも彼の目を見て言った。




「私ね…、明日恭平さんの実家に引っ越すんだ…」


「え…、何…?そんな急に…」




驚いているユキちゃんに、




「恭平さん、お母さんをなくしてからさみしくしてるみたいで、私、彼と一緒に暮らしてあげることにしたんだ…」




そう説明すると、ユキちゃんはそっかとため息をついた。




「そういうことなら仕方ないよな…」


「うん…」




私はバッグの中から輪ゴムで束ねた定期演奏会のチケットを取り出すと、それをユキちゃんに差し出した。




「それでこれ…、遅くなったけど渡しておくね…」



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