ずるすぎる幼なじみと甘々ふたりぐらし。

「はあああ……」


油の洗礼を受けるとは。

その後も、まあ散々だった。

じゃがいもの皮をピーラーで剝いてるときも、思いっきり動かしすぎて手の皮までむいちゃうし。

玉ねぎを切っているときにも指を切っちゃった。

だけど、きっと誰でも最初はこうだよね。

回数を重ねていけば、きっと上達するはず……!


「なにしてんの?」

「うわあっ!」


突然声がして、驚きすぎてお鍋で混ぜていた野菜が飛び出してしまった。

必死過ぎて、伊緒くんが帰ってきたことにも気づかなかったんだ。


「お、おかえり……」

「これは……?」


伊緒くんは、足元に転がったじゃがいもをつまんで首をかしげている。


「じゃ、じゃがいもだよ……っ」

「まあ、トマトには見えないよな」
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