ずるすぎる幼なじみと甘々ふたりぐらし。
「なんだ、隣じゃん」
彼が座ったのは隣だった。
「ほんとだ……」
「よろしくね、ももちゃん」
人懐っこそうな笑顔をみせる彼のネクタイは、ゆるーく結ばれていて、さっき私の髪が絡まったブレザーのボタンは全開。
その風貌、まるで新入生じゃない。
「俺のことも、善でいいよ」
「えっ」
「だって、俺だけ桃ちゃん呼びして、桃ちゃんが真柴くんなんて、すっげ―他人行儀じゃん。これから1年間同じクラスなんだし仲良くしよーよ」
まるで、捨て犬みたいな瞳で私を見つめてくる。
「あっ、えっとお……」
伊緒くん以外の男の子を名前で呼んだことがないし、なんとなく抵抗があるっていうか……。
言い渋っていると、またさらっと話題を変えてきた。
……いそがしい人だな。