買われた娘は主人のもの
「あなたは素直でいいわ。私だって御主人様の命令でも、番犬みたいにあなたの首に縄なんて付けたくないもの」

 コリーンはそんなことを話しながらエイミを隅々まで洗い上げる。

「…コリーン様…私、自分で洗えます…」

 恐る恐るエイミは彼女にそう声を掛けた。

「あらダメよ、これも御主人様の命令だもの。それに私の楽しみを取らないで?あなたを洗うのは、楽しみであり私の活かせる特技なんだから」

 コリーンはそう答え、少々色っぽく口をとがらせ、上目遣いで冗談めかし「めっ」と言った。

「コリーン様…」

 エイミは彼女の明るさになんだか救われた気がした。


 主人のための『役目』の支度が整うとエイミはコリーンから引き離され、バラドに連れられて部屋へ向かう。

(バラド様、だっけ…きっと私が逃げ出してもすぐに捕まえられるようにバラド様が私を部屋に連れて行くのね…)

 バラドは必ず脱衣場かその外に待機しているらしい。

 エイミは彼が恐ろしかった。
 主人に忠実であるこの大男がもし、少しでも怪しい動きをしたら娘を殺せ、とでも言われていたら…

 無言で無表情のバラドは、エイミにとって主人と同じく恐れる存在にしかなり得なかった。


「入れ」

 バラドに背中を押され、エイミは一人薄暗い部屋へ。
 エイミの、『役目』を果たす時間が始まった。
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