買われた娘は主人のもの

テイルへの謝罪

「テイル様…!?」

 部屋のすぐ外に聞こえたそのコリーンの声は、今までになく驚いた声だった。

 執事長のテイルが来たらしいが、今日は来る予定ではなかったのかもしれない。
 部屋の戸を開け、コリーンよりも先に入ってきた。

「…。」

 彼はなぜか困惑気味な表情でエイミの前に立ったきり無言。

「…ではテイル様」

 コリーンはそう頭を下げ、エイミの食事を置くとバラドと共に部屋を出ていった。


「…。」

「…。」

 残された二人は顔を見合わせたまま立ちつくしていたが、エイミはすぐに深く頭を下げる。

「お、お許しくださいテイル様…。そ、その…私…御主人様の…ご機嫌を、損ねてしまいました…!」

 エイミは必死に頭を下げ謝罪した。

「…。」

 彼は顔を歪め、エイミを見つめる。

「どうか…どうか…!!」

 頭を下げ謝り続けるエイミ。

「…お前は、出ていく機会を逃すのか…?」

 ようやく口を利いたテイルは顔を歪めたまま。口調はやはり困惑を含んでいた。

「え…?」

「ここを追い出されれば、食事にありつけなくなるからか?…主人の与える快楽に、ありつけなくなるからか…?」

 ようやくテイルの言った意味が分かったエイミは、すぐさま執事長の言葉を否定した。

「違います…!両親の心配はありますが、私を買っていただいた恩があるからです!…でも私、御主人様の、その…夜のお役目に、慣れなくて…」

 恥じらい震えながらも彼女がそう必死に打ち明けるのを、彼はじっと見つめていた。

 エイミにはあの行為の意味が分からない。
 愛する者とする行為だということも知らない。

 主人が誰かを│嬲《なぶ》り痛めつけるために自分は買われたのだと思うのは必然だった。
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