買われた娘は主人のもの

『変わり者』執事長

「…そうか…」

 テイルはそう言ってすぐさま立ち上がると、エイミの食事を暖かい敷物の前の床に置き、彼自身もすぐそばの敷物の上へ靴を脱ぎ座り込んだ。

「食事を摂れ」

「え…」

「聞こえなかったのか?食事を摂れ、ここでだ」

 ここ、と指し示されたのは敷物に座った執事長である彼自身の膝の上。

 エイミはもちろん戸惑う。

「で、でも…」

「…私の命令が、聞けないか」

 執事長はすぐさま低い声でそう言うと、エイミの手を強めに引き無理やり│胡座《あぐら》をかいた自分の膝に座らせた。

「きゃ!!」

 エイミは、自分はここでは誰にも逆らえないのだと改めて悟った。

 エイミは震えながら、座らされた執事長の膝の上を椅子代わりに食事を摂り始める。

「っ…」

 泣くのをこらえながら食事を摂り始めた娘の頭を、彼は一度だけ優しく撫でた。

「…良い子だ…」

 涙目で振り返ったエイミの目には、憐れみと悲しみの混じったような彼の表情が見えた気がした。

(…ここの人達からしたら、私は御主人様に│弄《もてあそ》ばれるために買われた可哀想な子犬なんだ…)

 エイミは涙をこらえて食事だけを見つめ、そしてなんとか食事を終えた。
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