買われた娘は主人のもの

眠る主人

 主人は相変わらず何も言わずに部屋に入ってきたが、いつものようにエイミの手首の縄を外すと今日は優しくその跡を撫でた。

「!!」

 驚いたエイミは思わず手を引っ込めようと動かしたが、主人は強い力でそれを制す。

「!!あっ…」

 すぐに謝らなければと思ったが、主人はエイミをベッドに押し付けると苛ついた声で言った。

「分からせてやる必要があるか。」

 殺される、そう思ったエイミはビクリと震え泣きながら謝罪をする。

「許してっ…許して下さい…!どうか、お許しをっ…!!」

 手は押さえられている。拭えない涙がベッドを濡らした。

 ベッドに寝かされ、押さえつけられたまま泣き続けるエイミ。
 主人はしばらくその様子を黙って見ていたが、やがて自身の熱い腕で泣き続けるエイミを抱きしめる。

 そしてゆっくりと身体を重ねた。



 ふとエイミが目を覚ますと、隣には目を閉じた主人の姿があった。

 静かな部屋の中、小さな寝息が聞こえる。

(…御主人様が、眠ってる…)

 主人に毛布ごと抱きしめられたままのエイミ。
 しかし今は手首の縄は外されているため、目の前の主人から逃げ出すことも、なんなら気になる彼の素顔を見ることもできる…

「…。」

 エイミはほんの少しの考えを振り払った。

 自分は屋敷に閉じ込められている身。
 飽きられたとき、何を考えているか分からないこの主人に生かされている保証もない。

 エイミは、自分はできる限りのことをしてこれからも生きていこうと心に決めた。


 そうこうしているうちに主人は目を覚ましたらしい。

「ん…」

 まだ頭がはっきりしていないのか、自らの腕の中にいる緊張をした表情のエイミを、何もせず見つめ続ける。

 しばらくすると彼は気付いたように身体を離し、自身の身を整えて部屋を出て行く。
 エイミは緊張の糸が切れたようにそのまま再び眠りについた。
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