買われた娘は主人のもの
 身体のタオルを乱暴にはだけられながら、エイミはやっと理解した。

(…きっと、自分の買った私が愛してるのがテイル様で、主人である自分じゃないから怒ってるんだ…!この子をテイル様の代わりにしてると思って…)

「ち、違…っ…ご、ごしゅじ…さまぁ…っ…!!」

 エイミはぬいぐるみから顔を背け、主人に抵抗も出来ずなされるがままだった。

「み、見ないでっ…!!見ないでリュカぁ…!!」

 エイミはぬいぐるみから目を背けたまま泣き叫ぶ。

「…リュカ…?」

 主人はふと動きを止め、エイミと、その視線の先にあるぬいぐるみを見る。

「リュカ…見、ない、で…お願…」

 主人は泣き続けるエイミを見つめた。

「…お前は…『大切にする』…と…。そうか…」

 主人は下を向いたままそう呟き、そっとエイミから身体を離す。

「…悪かった…」

 主人はそれ以上何も言わずに部屋を出て行った。
 表情の隠された主人が何を思っていたのかは分からない。

 謝罪の言葉は掛けられた。
 しかし誤解は解けたらしいとはいえ、自分の謝罪も弁解も聞き入れてくれようとはしなかった主人。

(もう、御主人様のためのお役目、したくない…)

 エイミは主人を信じられなくなってしまった。
 ただ涙を流しながらぬいぐるみを抱きしめ、意識し始めたテイルのことをぼんやりと思い続けた。
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