買われた娘は主人のもの
 エイミには仮面の主人がどのような表情をしているのか検討も付かない。
 それでもコリーンは真面目な表情で続ける。

「この娘が懐かないのであれば、御主人様に近づけておく訳にはまいりませんもの。わたくしのそばで娘を、御主人様に懐くまで引き離して躾をし直さなければなりません」

「こ、コリーン様っ…」

 やっと声を絞り出したエイミ。

 しかし、

「違うっ…!!」

 初めて聞く、主人の焦ったような声。

 コリーンは主人を真正面から見つめ、その続きを待っているよう。
 主人はエイミを見つめ、やがていつもとは違い穏やかに手を差し出した。

「…娘と、話がしたい。ただそれだけだ。…さあ、娘」

 エイミはまさか主人が、コリーンに命ずるでもなく自分をあのように誘うとは思っていなかったため戸惑う。
 しかし覚悟をし、ゆっくりと頭を下げた。

「…はい、御主人様…」

 コリーンはエイミをチラリと見て小さく頷くと、澄まし顔を崩すことなく主人に向かう。

「…ではテーブルセットを。御主人様のために、今すぐご用意いたします」

 そのコリーンの言葉に一瞬黙った主人だったが、

「…ああ」

とだけ返事をした。

(今さら、御主人様の前でお食事だなんて…。本当に、何もされない…?)

 エイミはただ震え、縮こまったまま黙っている。

「それから御主人様、大変失礼ながらもう一つお願いがございます」

 コリーンは主人を見据えて問う。

「この娘のぬいぐるみを、同席させて頂いてもよろしいでしょうか?基本この娘はわたくし以外、同類であるこのぬいぐるみにしか懐いておりませんの。お食事の時間では、なおのことですわ」

 コリーンは少しでもエイミの気が紛れるようにと配慮したのだろう。
 コリーンの進言に、さすがにいつも微動だにしなかったバラドが制す。

「…コリーン、過ぎるぞ」

 しかし主人は手を軽く上げ、

「…良い。許可しよう」

そう答えたのだった。

「ありがとうございます、御主人様」

 コリーンはそう返事をすると真面目な表情を少々崩し、エイミに優しく言い聞かせた。

「いい子にするのよ…?」

「はい、コリーン様…」
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