買われた娘は主人のもの

主人の吐息

 その夜。
 いつもより少し遅くに部屋に戻ったエイミは、久々に主人への役目を果たす用意がなされていた。


 エイミを連れてバスルームに向かったコリーンは、

「頑張って、エイミ…」

それだけを言うと、それ以上は何も言わずにエイミをいつものように磨く。

 そしてなぜかバラドは姿を見せず、今日はコリーンに部屋へ連れてこられたのだった。

(…聞こう…お役目は嫌だけど、リュカを頂いたのが御主人様ならお礼を言わないと…。聞きたいこともたくさんあるから…)

 身体にはタオルが巻かれ、縛られた手でぬいぐるみを撫でながらエイミはそう考えた。


 主人がやってきた。
 無言のまま、まだ夕日が差し赤く照らされた部屋の中をこちらへ向かってくる。

 主人はそばにくるとベッドの端に掛けていたエイミをすぐに強く抱きしめ、何かを取り出した。

 あっと思ったのもつかの間、エイミの目は主人の手にしたもので覆い隠される。

「御主人様…!?」

 主人は無言。
 エイミの身体を抱き上げ、両手を縛る縄を上のベッド柵に括り付けると、そのままエイミの身体を抱きしめた。

「っ…」

 苦しげな主人の呼吸が聞こえる。
 まるで彼の面が顔に張り付き、呼吸が出来ないとでもいうようだった。

「…娘…」

 ようやく経って苦しげな主人の声がする。

「私が憎いだろう…?『テイル』ならば良いか?『テイル』は酷い男だ…ずっとお前を前に、お前の全てを奪いたくて仕方がなかったのだから…」
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