買われた娘は主人のもの
「御主人様…!」

 部屋で仮面の主人を出迎えるエイミの身体には、いつものように大きく清潔なタオルが巻かれている。
 それを見るなり彼は小さくため息を付きながら言った。

「…まだコリーンはお前を入浴させているのか。もう良いと言ったのに、仕方のない奴め…」

「いいのです、御主人様。私はコリーン様との、このような時間が幸せなのです」

エイミはフワリと笑う。

「そのようなことを言われれば、私が妬けるだろう。お前には仕置きが必要か…?」

 主人が凄んでそう言おうと、エイミはニコニコと笑っている。
 彼は仮面を外し、困ったように笑った。

「…お前の笑みには負ける…。私が今までどんなにそのお前の笑顔を待ち望んでいたことか」

 主人のその言葉に、エイミは笑顔で返した。

「私の心は貴方のものですから…!御主人様といられて幸せだから、御主人様の前で私はこうして笑っていられるんです」

 彼はエイミの言葉に嬉しそうに笑った。
 自分の惹かれた彼の穏やかな笑顔は、どちらの姿でも変わらないとエイミは思った。

「愛している、エイミ…。これは役目ではない。私のそばに、いてほしい…」

 彼の穏やかにも真剣な言葉に、エイミも心からの気持ちを伝える。

「私も御主人様のもとにいたいです…!私も嬉しくて、御主人様とのこの幸せな時間を受け入れているんですから…!」

 そしてエイミは自分に微笑んでくれる彼にそっと寄り添った。

 彼は仮面の姿でも、皆の前で少しずつ温和な姿を見せられるようになってきた。
 もうすぐ、冷たかった屋敷の主人はいなくなるかもしれないとエイミは思っている。


 彼の起こした気まぐれでわがままな出会いが、今までどれだけのすれ違いと勘違いをしてきたか知れない。
 それでもエイミは、自分を愛してくれた二つの姿を持つ彼を、愛し受け入れた。

 こうして互いに笑い合った二人は、互いの存在を確かめるように固く抱きしめ合い、今宵も時が過ぎていった…

《終》
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