元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。



 黒瀬の整った顔立ちと妖しい雰囲気は、関わったほとんどの人を惹きつけていた。少し話しをしただけで、特に女性は、顔を真っ赤にしたり、わかりやすくアピールしたりするというのが日常の光景だった。

 静奈にとってはそれが面白くなくて、人知れずモヤモヤとした感情をを募らせていた。だから、その言葉はほとんど八つ当たりから出たものだった。

 しかし黒瀬は、それに対して大真面目に答えたのだ。


『全く無駄ではありませんよ。俺の顔に見惚れてぼんやりしている間に質問すると、言うつもりのなかったことまで口を滑らせてくれるということがよくあります。それに整った顔立ちというのは場合によっては体格の良い大男以上に威圧感があるでしょう?おかげでほとんど舐めた態度をとられたことがありません』


 顔の良さをしっかり自覚し1ミリも謙遜しない態度に少々苛立ちはしたが、割と納得もした。

 黒瀬の持つありとあらゆるものは、探偵としての彼の武器なのだ。無駄なものなんて存在しない。



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