元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。
さらに、彼女と過ごす中でこれまで一度も思ったことのなかった考えが頭をかすめるようになった。
死にたくない。
彼女が隣にいるのなら、このまま永遠に意味のない時間を生きていくのだって良い。
──しかし、そんな毎日を楽しいとばかりも言っていられなかった。
黒瀬の体調は、悪化の一途をたどっていた。
悪い日には思うように動くことも叶わず、依頼された事件の捜査を静奈に丸投げするということも多かった。
同居する静奈に隠れて病院へ通っては薬で症状を誤魔化していく毎日。嫌でも命が削られていくのがわかる。
本格的に危なくなる前に静奈を手放さなければならない。そう考えるようになったのも自然なことだろう。
だが考えたところで行動には移せなかった。まだ大丈夫、もう少し時間がある……と。
この頃、ようやく黒瀬にとって“死”が自分の人生の最後を彩る素晴らしいものなどではなく、ただの恐怖の対象へと変わっていた。