・LOVER—いつもあなたの腕の中—
「どうした?」

「そ……じゃなく……て」

「ん?」


 振り返ろうとするリュウをギュッと抱きしめ腕を解かれないように力を込める。そんな私の手はリュウの温かい手に優しく包み込まれた。


 止めてよ。そんなに優しくされたら、自分が許せなくて泣きたくなっちゃうから。


 上手く伝える自信も無ければ隠していることが苦しくて、ずっと黙っている自信も無いなんて随分自分勝手だ。どう考えても、自分が楽になりたいからだ。
 それが分かっているのに。リュウを傷つけないように伝えるにはどうしたらいいんだろう、なんて考えてしまっている。


「このまま聞いて。私、リュウに言ってないことが、ある」

「何?」


 リュウの声は何処までも優しくて。私のことを微塵も疑っていない。
 そんなリュウの背中に顔を埋めたまま、裕隆さんとの出来事をポツリポツリと話し出す。
 顔こそ見えないけれどリュウの背中が一瞬動揺したことは、背中越しにも分かる。黙ったまま、私の手を包み込んでいたリュウの温かい手が静かに離れた。


 やっぱり怒ったよね?


 当然だ。こんな話をさすがに裕隆さんからリュウに話しはしないだろう。私さえずっと黙っていれば誰も傷つかずに済むことなのに。
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