・LOVER—いつもあなたの腕の中—

「でも、あの人が次期社長なんだよね。うちの会社どうなるんだろう」と心配を始めた芽衣に「確かにねー」なんて気楽に答えてみたけれど。
　一抹の不安を覚えるのは確かだ。仕事もせずに遊んでばかりの副社長が社長就任した暁には、きっと業績も相当落ち込むだろうし。
　そもそも副社長自身が社員達の生活まで考えてくれる保証なんてない。
　もしかしたら早々に「店仕舞い」なんてことも十分ありえることだ。


「やっぱり転職か寿退社を真面目に考えておいた方がいいかもね」なんて現実的な話をする芽衣は、自分で言っておきながら「寿退社を今から考えるのは無理かぁ」と肩を落とした。

　芽衣に関しては、そんなこともないと思うけどな。海外出張もこなしてしまうくらいの仕事人間だから、転職先を探してもすぐに見つかるだろうし。
　寿退社だって出張先での相手も対象に入れたら出逢いも多いはずだから、しようと思えばできると思う。


「無理なのは私だよー」

「優羽はもう西田リュウと出逢ったじゃない」


　ショボンとした私は芽衣から全て見透かし悟った様に口にされたことで、さっきまで一緒にいた西田さんとの会話を脳内で再生してしまった。